アジャイル開発とは?仕組みとWATRIXの進め方をやさしく解説

システム開発の相談をすると、「アジャイルで進めます」と言われることが増えました。言葉の響きはよく聞くのに、実際に何がどう違うのか、発注する側からするとつかみにくいものです。
私たちWATRIXは、AI開発を含む多くの案件をアジャイル開発で進めています。この記事では、ITの専門知識がなくても読み進められるように、アジャイル開発の仕組みと、私たちが実際にどう進めているかをまとめました。専門用語には初出時に必ず注釈を付けています。
アジャイル開発とは何か
アジャイル(agile)は「機敏な」「すばやい」という意味の英語です。開発の世界では、「計画→設計→実装→テスト」という一連の工程を、大きな塊で一度に進めるのではなく、小さな単位に区切って何度も繰り返す進め方を指します。
対になる概念が「ウォーターフォール」です。滝の水が上から下へ流れて後戻りしないように、要件定義・設計・開発・テストという工程を順番に一度だけ通す進め方です。最初にすべての仕様を決め、その通りに作り切ります。
両者の違いを、家を建てることに例えるとわかりやすくなります。ウォーターフォールは、完成図面をすべて確定してから着工する建て方。図面通りに正確に建つ一方、住んでみてから「やっぱりここに窓が欲しい」と気づいても直しにくい。アジャイルは、まず土台と骨組みを作って一度見てもらい、そこから部屋ごとに手を入れていく建て方です。途中で気づいた変更を、次の工程に反映できます。
具体的には、開発を「スプリント」(1〜2週間程度の短い作業サイクル。この期間で計画・開発・確認までを1周する)という単位に区切り、スプリントごとに動くものを積み上げていきます。実現したい機能や要望に優先順位をつけて並べたリストを「バックログ」(優先順位付けされたタスクリスト)と呼び、優先度の高いものから順にスプリントへ割り当てて着手します。
なぜアジャイル開発が向いているのか
ウォーターフォールが悪いわけではありません。仕様が最初から明確で、途中変更がほぼ発生しない案件——たとえば法令対応や定型的な業務システムの置き換えなどでは、計画通りに正確に進むウォーターフォールが合っている場合もあります。
私たちがアジャイルを選ぶのは、次のような性質を持つプロジェクトが多いからです。
仕様が「作ってみて初めてわかる」プロジェクト。 特にAI機能の開発では、この傾向が強く出ます。プロンプトの精度、AIの応答が業務にどれだけ馴染むか、想定外の入力にどう反応するかは、実際に動かして初めて見えてきます。最初にすべてを設計図として固めることが、そもそも現実的ではありません。
現場の使い勝手を確かめながら作りたいプロジェクト。 業務改善のためのツールは、実際に使う人の手に渡って初めて「ここが使いにくい」がわかります。完成してから一括で直すより、2週間ごとに触ってもらい、直しながら育てるほうが最終的な満足度は高くなります。
優先順位が変わりうるプロジェクト。 市場や社内の状況は開発期間中にも動きます。半年前に決めた仕様通りに作り切るより、直近の状況に合わせて優先度を入れ替えられるほうが、実際の価値につながります。
不確実性の高いテーマほど、アジャイルは力を発揮する。私たちはそう捉えています。
WATRIXが実際にアジャイル開発を進める流れ
ここからは、私たちが案件でどう手を動かしているかを、実務の流れに沿って説明します。

1. ヒアリング
最初に、解決したい課題と、実現したい状態をお聞きします。この段階では「完成形の仕様書」は作りません。代わりに、優先度の高い要望から順に並べたリスト(バックログ)を一緒に作ります。「まず何があれば業務が回るか」を基準に、必須の機能と、あったら嬉しい機能を仕分けます。
2. 全体計画とスプリント設計
バックログをもとに、開発のサイクル(スプリント)を1〜2週間単位で区切り、各スプリントで何を作るかの大枠を決めます。あわせてプロジェクト全体のおおよその期間と、序盤・中盤・終盤で何が形になるかの見通しをお伝えします。ここで決めるのは「大枠」であり、スプリントごとの詳細は都度調整していきます。
3. スプリント単位の開発とレビュー
1スプリントごとに、優先度の高い機能から実装します。スプリントの終わりには、実際に動く画面や機能をお客様に確認していただきます。「思っていたのと違う」「この並び順のほうが使いやすい」といった声を、次のスプリントの計画に反映します。この確認サイクルが、アジャイル開発の核になる部分です。
4. 改善とふりかえり
各スプリントの終わりに、私たちのチーム内でも進め方をふりかえります。見積もった作業量と実際にかかった時間のズレ、想定外に手間取った箇所を洗い出し、次のスプリントの精度を上げていきます。この積み重ねが、プロジェクト後半になるほど見通しの精度を高くしてくれます。
このサイクルを、バックログが片付くまで、あるいは目標の状態に到達するまで繰り返します。
よくある疑問・不安への回答
途中で仕様が変わっても大丈夫ですか。 変わることを前提にした進め方です。次のスプリントの計画に組み込めば対応できます。ただし、すでに着手済みのスプリントの途中で大きく方向を変えると、その回の作業がやり直しになることはあります。変更に気づいた時点で早めにご相談いただくほど、影響を小さくできます。
見積もりはどうなりますか。 最初の全体計画の段階で、おおよその期間と費用感をお伝えします。ただし、ウォーターフォールのように「最初に確定した金額で最後まで固定」という形ではありません。スプリントごとの実績を踏まえて、残りの見通しを都度アップデートしていく形になります。予算の上限がある場合は、その枠内でバックログの優先順位を一緒に調整します。
いつ完成するのかが見えにくくないですか。 スプリントごとに動くものが積み上がっていくため、実は完成に近づく過程が見えやすい進め方です。「今どこまでできているか」を毎回確認できるので、ウォーターフォールで最後の最後まで完成品が見えないよりも、進捗の実感は持ちやすいと私たちは考えています。
打ち合わせの頻度が多くて負担になりませんか。 スプリントごとの確認は、30分から1時間程度を想定しています。事前に議題を絞ってお送りするので、その場で判断いただければ十分です。頻度は案件の性質に応じて調整できます。
まとめ
アジャイル開発は、小さなサイクルを繰り返しながら、変化に対応して育てていく進め方です。仕様が最初から固まりきらないプロジェクト、特にAI機能を含む開発とは相性が良く、私たちWATRIXも多くの案件でこの方式を採用しています。
「うちの案件はアジャイルとウォーターフォール、どちらが合っているのか」——迷う場合も、まずはお気軽にご相談ください。課題をお聞きした上で、進め方から一緒に設計します。
